雑記

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映画「ツリー・オブ・ライフ」感想

久し振りに映画館で映画を観て来ました。感想を。
※ネタばれを含みますが、そもそもこの映画にはストーリーというほどのストーリーはありません。

この映画は、ストーリーの部分と、スピリチュアルパートに分かれています。
オープニングは冒頭から名画の予感だったのですが、その後、何故か地球の海・山・川・空の景色や、宇宙の描写が入ります。
セリフも無く、(時にはBGMも無く)異様に長くて、ヒーリングビデオを観ているかのようで
延々とこれが続いたらどうしようか、帰ろうかと思うぐらい不安になりましたが、
どうも、宇宙の誕生から主人公が生まれて来るまでを描きたかったようです。
なんとも壮大ですが、はっきり言って冗長で意味不明でした。
まさか、ブラピとショーン・ペンの映画を観にいって、恐竜を見ることになるとは思いませんでした。
この映画は時間が長いのですが、この辺をバッサリとカットしたら丁度いい尺になったかもしれません。

しばらく我慢すると、やっと人間が登場して、ドラマが始まるのですが、
ここからはさっきのスピリチュアルパートですっかり脳が刺激を求めている状態になっていたせいか、
どんな些細な展開でも結構のめり込んで見てしまいました。
まあ、ドラマパートのカメラワーク、BGM、演出は素晴らしいと思います。

■世界はインチキだ

ドラマパートのほとんどが主人公(ショーン・ペン)の幼少〜少年期の回想です。
(ショーンペンの出番はそれほど多くないし、セリフも少ないですが、存在感がありました。)
幼少の頃は親に愛され、天使のような存在だったのに、少年になって、世界はインチキだという事が分かってきて、
次第にグレていきます。尊敬していた親(ブラピ)にも次第に反抗を示すようになります。
矛盾した世界に気づき、悩み、苛立ち、葛藤する。善か悪か。
人間なら、成長する過程で誰しもが通る道で、ストーリーとしてはありふれているじゃないか、と思うのですが、
でも何故かグイグイ引き込まれて見てしまうのは、もちろん演出のうまさもありますが、
悪を知って、次第に目つきが変わっていく子役の演技も光っていました。
もしかして、子役の成長に合わせて何年もかけて撮影したんじゃないかと思うぐらい、
変貌していく(成長していく)様子を丹念に描いています。


■和解できるアメリカの家族

主人公を取り巻くストーリーもありふれています。
主人公の父(ブラピ)は優しい母とは反対に威厳を持って、子供に対しては厳格に振る舞いました。
長男である主人公には厳しく、時には暴力的に当たります。それは、世俗の中で「成功」してほしかった、
(「成功」できなかった)自分のようにはなって欲しくなかったからなのですが、
子に過剰に自分の夢を押し付けると、逆にグレてしまうというのは世界共通のようです。
ですが、彼らはある出来事をきっかけに和解しました。
日本ではできないと思ったのは、親と子が素直に自分の気持ちを告白し、和解できるところです。
親子で表面的なコミュニケーションしか取れない日本だと、一旦不仲になるとそのままではないでしょうか。
(あ、それは自分だけか)
何か、「これがアメリカの家族だ」的な強い絆のようなものを感じました。「大草原の小さな家」的な。


■芝生はアメリカ人のステータス(ってどっかで読んだ)

あと、この映画は「家」のシーンが多い、ほとんどのドラマが家の中で起こる。
そして、アメリカの家族がいかに庭の「芝生」を大切にしているかが分かる。
主人公達(兄弟)はいつも芝生で遊ぶ。芝生を走り回り、寝転がる。
母親は洗濯物を干す。父親は肉を焼く。家族団らんも芝生で行われる。
親は子に芝生の手入れを教える。雑草の抜き方だの芝生の長さだの細かい。
屋根裏部屋付き一戸建ての家、きれいに手入れされた芝生の庭。
そこそこの車(劇中の車がどのレベルのものかは私には分からない)。
これが、一般的なアメリカの家族のステータスなのだろうか。


■モルダウを聞くためだけに金を払ってもいい

この映画はカーチェイスや爆破といった、派手なシーンも(もちろん)無く、ストーリーも地味で、
何よりも、放送事故寸前の意味不明で冗長なシーンも随所ありで、
全体の評価としては、悪くも無かったけど、特別良くも無かった。
自分は感受性豊かではないので、こういう映画はあまり性に合わないのだろうが、
「考えるな、感じろ」を実践できる人にとっては最高の映画かもしれない。
なんでもカンヌ映画祭のパルムなんとか受賞らしいけど、こういう何か思わせぶりで、
崇高なテーマがありそうで、描写が変態的に丹念なのがやっぱりウケルようだ。

最後まで見ても、ショーン・ペンがどうなったか、どうするのか全く分からないし、
「ただ、主人公が昔を懐かしんだだけでした」って感じもするけど、
実は、主人公も死んだのか?と思う描写もあったりする。何故か心臓モニターみたいな音が聞こえたり。

世俗に生きるか、信仰に生きるかという選択は、日本人にとっては馴染みが薄いだろうが、
選択することなんてできないだろうという事は分かる。選択すれば極端な人生が待っている。
実際は多くの人はその間でバランスを取って生きているはずだ。
主人公も、これからもそうやって狭間で生きていく(生きていれば)という話なのかもしれない。


個人的には、予告編で流れてた「モルダウ」が聞きたくて、観にいったようなものなので、
これが聞けただけで金を払う価値はあったと思う。音楽と映像もマッチしていた。

名画と呼ぶに相応しい手触りもありつつ、なんとも惜しい映画である。
 
 
 
なんか最初と最後で口調が違う・・ 
 
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